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[荒井学長通信No.3] コロナ禍での授業(2)

荒井学長通信No.3

今年の4月から、コロナ感染防止対策のために、本学でも「オンライン授業」を始めることとなりました。音声や画像、Wi-Fi環境、パソコン操作など、技術的問題に直面しながら、私たち教員は初めて本格的な「オンライン授業」の遂行を経験しました。

学生とのオンライン授業について先生方が悩んでいる点は、やはり学生の反応が見えづらいことです。対面であれば、学生たちの反応や表情を見ながら授業のテンポを定めていきます。オンラインでは、それが見えず、適切なテンポを確かめられないまま、授業を進めざるをえなくなります。私もはじめてオンライン授業をしたときには、テンポがわからず、2回分の授業を1回に詰め込んでしまいました。

教育効果は、圧倒的に「対面授業」のほうが良いはずです。私もオンラインでの講義を経験するまでは、そう思っていました。しかし、意外なことに、私の経験は逆でした。オンラインによって距離感がなくなって、学生一人ひとりに語りかけるような気持で話をする自分に気づいたのです。私の専門分野は哲学で、授業科目は「人間学」です。それは、思いっきり理論的で概念的で難易度の高い内容の授業です。ところが、対面授業でやっていたときよりも、オンライン授業で行う時のほうが、学生たちの理解度がはるかに高いことを知りました。学生たちは、まるで教室の最前列で話を聞いているような、そんな感覚でオンライン授業に臨んでいたのです。(しかし、それでも学生たちは対面授業を私に望みました。)

ほかの先生方はどう評価しているのでしょうか。大学が行った「オンライン授業」についての教員アンケート調査では、意外なことに先生方の「オンライン授業」への評価は、私と同じように、たいへん好意的なのです。

「オンライン授業による学修効果」は、「かなり効果が感じられた」10.7%、「やや効果が感じられた」85.7%。なんと90%以上の先生方が、オンライン授業でも効果があったというのです。

先生方の意見をいくつか紹介します。
「講義中は表情がわからず話しづらさはありましたが、授業時もチャットを使用することで理解度を確認することができました。成績が、昨年よりも良いことから、オンラインの効果があったと感じました」「対面で質問できない学生がチャットをとおして質問するなど、比較的活発に授業に取り組む姿勢を感じた」「対面授業よりも反応が直に伝わってくる」

他方では、オンライン授業の課題として、
「機器操作の複雑さ、学生への目の届かなさ、学生の反応の把握の難しさ」、「グループワークやディベートのやり方などを工夫する必要性」を指摘する先生もいます。なかには、「学生の課題というよりも自分自身の授業の進め方の再検討が必要か」と、これを機に自ら授業改善のきっかけにしようとする先生もいます。

私自身の場合について言えば、パソコン操作の不慣れのために、オンライン中に学生の反応や双方向のやり取りができませんでした。そこで、学生とのコミュニケーションをとるために、別の方法を試みてみました。

本学では、昨年から学生ポータルシステムが導入され、学生への連絡や学生からのレポート提出の窓口として、これを活用することができます。私はこのポータルシステムのアンケート機能を利用して、学生たちに授業後の感想・意見・質問を募りました。授業をする私自身が不安だったからです。すると、これまで対面で行ったときとは比べようもないほど、多くの意見・感想が寄せられました。1、2行のコメントから十数行におよぶ長文まで、ほとんどの学生がコメントを送ってきました。そこから逆に、学生たちの授業への理解度や関心度をよく知ることができました。これはオンライン授業がもたらした予期せぬ副産物でした。

大学は学生たちがともに学び、成長しあう場所です。授業は本来は対面で行うものです。オンライン授業はあくまでも対面授業の代替なのです。しかし、そう言いきってしまうには惜しい側面が、オンライン授業にあることも事実です。オンライン授業の特性を知ったうえで、今後はこれをうまく併用していくことが得策でしょう。

この夏のあいだに全国でコロナワクチン接種が進められています。本学でも、7月から8月にかけて、鳥取短期大学とともに、学生・教職員を対象に、また地域の住民、高校の先生、保育施設や企業の職員を対象にして、学内で職域ワクチン接種を行いました。これによって、学内にコロナ感染抑止の環境が整うことを期待したいものです。

9月28日から後期授業が始まります。ワクチン接種が完了したからといって、授業をコロナ禍以前の状態に戻すことはできません。感染のリスクは依然として続いているからです。対面授業を主流にしながら、しかし三密を避けるために、オンライン授業を併用する「ハイブリッド授業」の体制をとっていかざるをえません。まだまだ我慢の日々が続きます。そうした制約下にあって、学生たちの大学生活の充実をいかに維持するかが、大学に求められた課題なのだと思います。
鳥取看護大学
学長 荒井 優
(2021年9月29日掲載)

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